menu
特設コンテンツ

みんなでつくるFC今治観戦体験向上プロジェクト #1

2019シーズン、FC今治とデロイト トーマツ コンサルティングの協働で実施した「観戦体験向上プロジェクト」。立ち上がりから1年間を費やしたプロジェクトで明らかになったFC今治とファンの関係性やこれからの可能性について、4回にわたってご紹介します。

imabari_bnr_1.jpg

【植野】
皆さん、こんにちは。FC今治の植野準太です。普段広報やマーケティングのお仕事をしています。川野さんや、デロイト トーマツの皆さんと昨シーズン1年かけてホームゲームの「観戦体験向上プロジェクト」に取り組んできました。今日から4回にわたって、プロジェクトのWeb上報告会ということで、川野さんと一緒にナビゲーターを務めます。宜しくお願いします!

【川野さん】
皆さん、こんにちは。デロイト トーマツ コンサルティングの川野遥香です。普段は「顧客体験」(カスタマー・エクスペリエンス)、いわゆる最終的なお客様に、モノやサービスそのものだけでなく、その前後の体験も含めてどうやって楽しみ、ファンになっていただくか考える、お仕事をしています。どうぞ宜しくお願い致します。

プロジェクトに取り組んだきっかけを教えて下さい

【植野】
FC今治には、「そこにいる全ての人が、心震える感動、心踊るワクワク感、心温まる絆を感じられるスタジアム」というフットボールパーク構想があります。このビジョンを実現するため、「ありがとうサービス.夢スタジアム®」ではサッカーの試合を観戦いただくだけではなく、いろいろなワクワクがあり、人と人のつながりができる仕掛けをたくさん作ってきました。
このビジョンに、もっと近づくため、FC今治のホームゲームにお越しいただくファンの皆様の、試合前後も含めた各シーンにおける体験の調査を通じて、スタジアムでの観戦をより楽しんで頂く環境を作りたいという思いからスタートしました。

【川野さん】
私が働くデロイト トーマツ コンサルティングでは、FC今治のリスタート期からソーシャルインパクトパートナーとしてクラブの応援をさせて頂いてきました。経営コンサルティングの会社というと、なかなか何をやっている会社かイメージがつかないと思うのですが、いろいろな企業様のご支援を通じて培った専門性や経験を活かして、FC今治の皆さんのお役に立てないか・・といったところから今回の企画がスタートしました。
私はもともと「顧客体験」をテーマとするプロジェクトに関わる機会が多かったことからお手伝いすることになったのですが、実はスポーツ観戦、ましてやサッカー観戦は超初心者でした...。2018年にホームゲームに伺ったのが初めての今治で、FC今治、クラブとともにあるファンの方々、スタッフの皆さまの愛に触れ、気づけばFC今治や今治の地が大好きになって。スポーツと触れ合ってこなかったけれど、そこにFC今治の色が少し加わったら、もっと毎日が楽しくなる人がいるかもしれない。今は、顧客体験の知見を活かして、初めての方にも、強力なサポーターの方にも、試合で勝っても負けても「楽しかった」と思って頂けるような場所にしたいという想いでプロジェクトに取り組んでいます。

具体的にどのようなアプローチでプロジェクトを進めたのでしょうか?

【川野さん】
はい、いわゆるスポーツ観戦の顧客体験は、試合を観戦するだけにとどまりません。試合開催を知った時から、チケットを購入してスタジアムに来場し、試合開始前にフットボールパークでイベントやスタグルを楽しみ、試合観戦後、翌日に試合のニュースをチェックするまでを16個の体験として定義し、各体験が全体の推奨度にどのように影響を与えたかを、来場頂いた皆さまへのアンケートを通じて明らかにしようというアプローチをとりました。推奨度というのは、FC今治の観戦を知人や友人にどのくらい奨めるかを11段階で問うものです。
また、スタジアムの座席種別によってファン方の楽しみ方に違いがあるのではないかという仮説から、座席種別ごとに結果の集計・分析を行いました。このアンケート調査は、2019シーズンの4月・7月・11月の3試合実施し、各回で調査結果が出た後にはFC今治の皆さんとデロイト トーマツのメンバーとのワークショップを通じて、来場して下さった方々がどのような体験をされているのか、皆さんにもっと楽しんで頂くためにはどんな取り組みができるかをディスカッションしました。

IMG_1245.jpg
デロイトトーマツ FC今治のワークショップより

共同プロジェクトに取り組んでみた感想や、各々何か変化はありましたか?

【植野】
プロジェクトの開始当初に、1年間の取り組みを終えた時に「こうなりたいね」というゴールを皆さんとディスカッションしましたよね!

● FC今治としてのファン定義が共通理解となっている
● FC今治にとって、目指すべき観戦体験が共通理解となり、どのようなファン層にアプローチをしていくべきかや2020シーズンに向けて取り組むべきテーマが明確になっている

FC今治のメンバーが、まさにこうした理解や意識を共通で持てたことは大きな変化だったと思います。社内でも「次のアクションはどうなっている?」「初めて来てくれるお客さんにどうしたら楽しんでもらえるだろうか?」といったように、ワークショップで出てきた課題が自然と普段の会話や行動につながってくるようになりましたね。また、お客様に満足頂いているかどうかを、数字で把握しようという考え方もある程度浸透してきたように思います。

【川野さん】
デロイト トーマツの関与メンバーも開始当初は4名でしたが、組織の壁を越えて参加したいと言ってくれるメンバーがどんどん増えて、最終的には20名以上のメンバーがボランティアベースで参画しました。FC今治さんや所属組織外の社内メンバーとの新たなつながりができたり、コンサルティングで培ったナレッジを活かしたり、逆に普段の業務とは違う新たなインプットを得る機会にもなったようです!

【植野】
アンケート調査は、HP等での告知の他に、試合当日来場して下さった方にチラシを配布してご協力をお願いしましたが、個人的には、デロイト トーマツのコンサルタントの皆さんが一生懸命チラシ配りしていたのも、新鮮というか良い意味で驚きでした(笑)!プロジェクトを通じて、これまでのスポンサーの枠を超えて、デロイト トーマツさんと新たなつながりができたことも大きかったと思います。

【川野さん】
試合後の体験まで明らかにするために、会場でアンケートに回答頂くのではなく、試合日にメールアドレスを登録して帰宅後回答頂く必要があったので、チラシを配りつつもどのくらいの方に回答頂けるかちょっと不安ではありました。でも、結果的には、3回のアンケートを通じて延べ1000人以上の方々が協力して下さって、驚きと共に感謝の気持ちでいっぱいです。
雨の中での試合でも、皆さん快くチラシを受け取って下さったり、差し入れまで頂くこともあって・・・今治の皆さんの温かさを感じました。つながり・・・という点では、FC今治のファンの皆さんとデロイト トーマツとのつながりもできましたね。「デロイトさんよね?」と声をかけて下さる方もいて、皆さんスポンサーのことまでよくご存じで、会社の中にいるだけではわからない貴重な体験でした。

ホームゲームでのチラシ配布の様子㈫.JPG
FC今治 ホームゲームでのチラシ配布の様子

3回の調査結果からは、どのような傾向がありましたか?

【川野さん】
まず3回の調査でわかったのは、FC今治の観戦体験は、試合そのものだけに影響されていない、ということです。実は、同じアプローチで、日本・アメリカ・ドイツの3か国でスポーツ観戦のグローバル調査を実施したのですが、ドイツ・アメリカとの比較から見えた日本の特徴は「試合そのものが持つ影響の大きさ」でした。日本のスポーツには、試合そのもの以外で観戦体験を構成するという文化がまだまだ根づいていません。逆に言えば、試合前後には観戦体験を盛り上げる大きな可能性があると言えます。

これに対して、FC今治の場合は、フットボールパークでの体験や試合後の選手との交流、帰宅後の情報収集など、いろいろな接点が良い影響をもたらしているといえます(図表①)。この図表の見方を少し説明しますと、各々の体験に対し、知人や友人にどのくらいおススメするかという度合いを見ています。緑の線は、その推奨度の影響の大きさ、オレンジの線は実際どうだったかを示しています。緑とオレンジの線にギャップがあると、改善の余地あり・・という点もわかります。FC今治の場合は、試合はもちろん、それ以外にも気持ちがぐっと高まる体験がたくさんあることがわかりますよね。

また、メインスタンドで観戦した方が試合以外のイベントで気持ちを高めているなど、座席種別によって観戦体験が変化していくことも明らかになっています。また、愛情の変化という項目では、コアファンになっていただくために大事なことも浮かび上がってきました。

調査結果はある程度狙い通りだったのでしょうか?

【植野】
サッカーの試合観戦はもちろん、いろいろなワクワクや人と人のつながりを通じて、試合に勝っても負けても、「楽しかった」と思って頂ける場所にしたいという思いがあったので、そうした取り組みの成果が見える化できたのは、嬉しかったですね。岡田さんは、「俺たちの試合がつまらないということか!」と仰っていましたが(笑)。

20200814_deloitte_1.jpeg

【川野さん】
お客様の一連の顧客体験を一種の旅に見立てて「カスタマー・ジャーニー」と呼んだりするのですが、こうした調査結果を踏まえて、観戦して下さった皆さんの感情の流れを、一続きの「スペクテーター・ジャーニー」(観戦のカスタマー・ジャーニー)として分析し、FC今治の皆さんとワークショップを通じて、観戦体験をさらに向上するための取り組みや今後の可能性について継続してディスカッションを行ってきました。次回以降は、植野さんやプロジェクトに参加したメンバーと一緒にさらに詳しく説明していきたいと思います。植野さん、引き続き宜しくお願いしますね・・・!

【植野】
は、はい!がんばります・・・!はじめてのJ3もいよいよ開幕となりました。コロナ禍の影響で、これまでとは異なる形でのホーム戦開催にはなりますが、皆さんと一緒に積み上げてきた結果は今シーズンにもぜひ活かしていきたいと思います。 今治と東京の距離を超え、FC今治とデロイト トーマツのコラボレーションで始まった観戦体験向上プロジェクト。アンケート結果で明らかになってきたファンやサポーターの姿と、「心震える感動、心踊るワクワク感、心温まる絆」が感じられる観戦体験の実現に向けた、チームメンバーの想い。次回は、「スペクテーター・ジャーニー」をどのように描き、具体的な改善に取り組んだのか、詳しく解説していきます。(第2回へつづく・・)

所属・肩書は記事作成当時のものです

CRMCX_harkawano_3.jpg

川野 遥香

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

Customer & Marketing Division Customer Experience Team

コンサルタント/カスタマー・エクスペリエンス・デザイナー

外資系コンサルティングファームを経て現職。CRMビジネスの中でも特にCustomer Experienceの分析および設計をグローバルに担当し、スポーツビジネス、エンターテインメント業界およびMaaS (Mobility as a Service)を中心にB2C、B2B2C領域の顧客体験の設計のなど幅広い経験を有する。FC今治の観戦体験の調査、分析および設計をリード、現在は某スポーツ団体の体験調査に関わる。CXPA(Customer Experience Professional Association会員)

トップパートナー
/ 共生社会実現パートナー

エグゼクティブパートナー