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パートナー

【パートナーとの取り組み】「よいことをしている」を可視化するSROI

今治. 夢スポーツはFC今治のソーシャルインパクトパートナーであるデロイト トーマツ グループとともにSROI(Social Return On Investment:社会的投資収益率)という指標を用いて事業活動が生み出す社会的価値を可視化する取り組みを行いました。
この取り組みの中心を担ったデロイト トーマツの里崎慎氏と今治.夢スポーツ執行役員氏家翔太の言葉とともにSROIを通じて私たちが目指す未来をご紹介します。

「よいことをしている」が、成果を可視化できない

氏家翔太(以下、氏家):私たちの企業理念は「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」です。この理念を実現すべく、フットボール事業に限定せず様々な事業活動を行っていることが私たちのユニークな点です。しかし、私たちが行ってきた活動に対して「よいことをしている」という感触はあるものの、成果を見える化できないという課題を感じていました。そんな中で里崎さんにSROIについて教えていただいたことで今回の取り組みがスタートしました。

里崎慎氏(以下、里崎):スポーツコンテンツの特徴は誰もが喜怒哀楽を体験できるという点にあると思います。喜怒哀楽を体験すること自体で直接的なキャッシュ・フローが生じるわけではありませんが、非常に大きな価値を社会に生み出していることは、誰もが実感されていることと思います。しかし、実際にはキャッシュ・フローを伴う「可視化できる」部分でスポーツの価値が測られており、スポーツコンテンツが本来生み出している価値の一部にとどまってしまっているという現実があると感じています。

これまで埋もれていた見えない部分を可視化するSROI

里崎:スポーツビジネスで経済的価値として可視化できているのは「氷山の一角」です。海上の氷山で見えている部分は実は1割程度で、海の中に残りの9割が隠れています。スポーツコンテンツが生み出している価値は大きいのに実際には外から見える1割程度の経済的価値しか金銭価値として可視化されておらず、見えていない9割の社会的価値を可視化できていない可能性があります。この見えていない社会的価値を金銭価値として可視化する手段として着目したのがSROIです。SROIは投資された資源に対してどの程度の社会的成果が生まれたかを金銭指標で置き換えることで社会的価値を可視化するフレームワークです。

SROIの計算方式
社会的投資利益率(%) = 一定期間の社会的成果 ÷ 投下された資源額

氏家:里崎さんからSROIについてご紹介いただいたときにまず感じたのは、パートナーが私たちに投資する意義を可視化できるようになるのではないかという期待でした。スポーツ業界で言ういわゆる「スポンサー」のことをFC今治では「パートナー」と呼んでいます。これはお互いの理念を実現するために協業していく「パートナー」となっていきたいという思いからです。とは言えパートナーは我々にある意味でお金を投資してくれているからには費用対効果の検証が必須です。費用対効果を検証するためには効果(成果)の可視化・数値化ができなければなりません。しかしこれまでパートナーとの取り組みを通じて「よいことをしている」という感触は共有できていたものの、成果を具体的に可視化・数値化できていないという課題がずっとありました。この課題をSROIなら解決できるのはないかと考えたのです。

SROI分析を進めることで自分たちの生み出している価値を再認識

里崎:SROIを算出するためには、具体的に行った取り組み(アウトプット)は何か、その取り組みを行うためにどの程度のコストが生じたのか(インプット)、そしてその取り組みがどの様な成果(アウトカム)をもたらしたのかを把握する必要があります。そのために私たちと氏家さんをはじめとするFC今治の皆さんでワークショップを行いました。

氏家:ワークショップを行ってみたら可視化しづらいものがあることが分かりました。「良いことをしている」で終わらせずに、可視化するためにどうすればよいかということを議論できるようになったのは収穫でした。それ以上に大きな収穫だったのが、自分たちの活動を改めて自己認識できたことです。ワークショップを通じて、何となくしか把握していなかった自分の担当外の活動への理解も深まりましたし、個人的に嬉しかったのは、皆が最終的に目指している方向性が企業理念の実現で一致していることを認識できたことです。私たちの活動の成果を可視化することがSROIの目的でしたが、社内の皆の想いを可視化できたことは想定外の大きな収穫です。

SROIの結果とそれをどのように生かしていくか

里崎:大前提として今回はトライアルの側面があるためすべての成果を可視化できたわけではないということを踏まえた上でも、すべてのカテゴリーでSROIが1倍を超える結果となりました。SROIが1倍を超えるということはFC今治さんの活動が投じられたインプット以上の社会的価値を生み出しているということです。

参考:
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/consumer-and-industrial-products/articles/sb/sroi-imabari.html

氏家:今回の結果には直接的な経済的価値は含まれていませんから、経済的価値と社会的価値を合わせると、SROIの数値以上に大きな価値を生み出していると捉えることができます。私たちのパートナーからの視点で考えると、FC今治のパートナーとなることによる広告宣伝効果という経済的価値の創出と、パートナーとして協業を行う、あるいはパートナー収入の一部を原資として私たち行う活動から生まれる社会的価値を足し合わせると、FC今治に直接的に投資している金銭以上の価値を生み出しているということになります。社会的な貢献のために我慢してお財布を痛めてお金を出すのではなく、経済的な価値と社会的な価値の両方を生み出すための経済活動にポジティブに参加していくことができる。スポーツクラブとのパートナーシップを通じてそんな世界を作っていく一歩になるのではないかと感じています。

「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」という企業理念を実現していくためには、私たちだけではなくファン・サポーター、パートナーの皆さんなど私たちに関わっていただける「FC今治ファミリー」の皆さんとのご協力が必要です。
SROI分析により、これまで見えていた経済的価値に加えて、私たちの活動が生み出している社会的価値も可視化できるようになることで、特にパートナーの皆さんにとっては私たちとともに活動する意義とその効果がより明確になり、より良い社会を共に創っていくサステナブルな関係性を築いていけるようになることを願っています。

里崎 慎 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社


スポーツビジネスグループ シニアヴァイスプレジデント 監査法人にて会計監査業務に従事した後、グループ会社であるデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーに移籍。M&A支援業務に従事する傍ら、グループ内でのスポーツビジネスグループの立ち上げを提案し、その中心メンバーとして活動する。日本野球機構(NPB)の業務改革支援や、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の組織再編支援業務にプロジェクトマネージャーとして関わる。Deloitteから発表されている「J-League Management Cup」の執筆責任者も担当している。

氏家 翔太 株式会社今治.夢スポーツ


執行役員 都内の外国語教育関連企業でCEOを経て、パートナーシップグループ長として2019年5月に今治.夢スポーツ入社。同年11月より執行役員に就任。スポンサーシップからパートナーシップへの転換を掲げ、デロイト トーマツ グループと行ったしまなみアースランドの環境教育プログラムをベースとした環境教育冊子「わたし、地球」の共同制作を主導するなど、サッカークラブの運営会社にとどまらない今治.夢スポーツならではのパートナーアクティベーションの在り方を確立することに注力している。

トップパートナー
/ 共生社会実現パートナー

エグゼクティブパートナー