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第三回 「わたし、地球」へ込めた思い


2020年に今治.夢スポーツとソーシャルインパクトパートナーであるデロイト トーマツ グループによる取り組みの一環として、環境教育の拡充のための環境教育冊子「わたし、地球」を制作しました。制作された環境教育冊子は、2020年度は今治市内の小学5年生に、2021年は小学4年生及び5年生に配布いたしました。更に今年の6月には「わたし、地球」の一部がSDGsの理解を促進するための小学生向けコンテンツとして、ハローキティ主演で動画化されるなど、サッカークラブのパートナー活動の枠を超えるような大きな取り組みになっています。
今回は「わたし、地球」の制作に関わった2名が語る「わたし、地球」が生まれたきっかけや、込められた想いをお届けします。

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「わたし、地球」の内容について伺っていきましょう。まずは、簡単に内容について教えていただけますか?

【氏家】
「わたし、地球」には二つの物語が収められています。一つ目が冊子のタイトルでもある「わたし、地球」、もう一つが「生き物のちから」です。
「わたし、地球」は地球が生まれてから今までの歴史について、「生き物のちから」は今の地球で暮らす生き物たちの命の循環について、どちらも地球が一人称で読者に語りかけるような物語となっています。
また、二つの物語だけではなく、巻末にデロイト トーマツさんに作成していただいたSDGsに関するパートも収録されています。

どの様なねらいで地球が一人称で読者に語りかけるという形式にしたのでしょうか?

【黒澤】
地球環境を良くしたいか、悪くしたいかと尋ねたら、ほぼすべての人が良くしたいと答えるとは思うんです。でも、そう答えた人が環境問題に対して何か行動をとっているかというと、そうではないですよね。
環境問題って、とても身近で誰にでも関係あることなのに、どこか他人事、例えるなら三人称で語られることだと感じてしまっている現状があると私は思っています。
「わたし、地球」では地球は自分のことを「わたし」と呼び、読者のことを「あなた」と呼びます。逆に文中には出てきませんが、読者が「わたし」なら地球は「あなた」となるので、地球と読者は「わたしたち」の関係ともなります。
地球と読者が「わたし」と「あなた」や、「わたしたち」の関係になれば、地球の環境問題はどこかの誰かのことではなくて、身近な「あなた」だったり、あるいは「わたしたち」の自分事の問題であると読者に感じてもらえるのではないかと思い、地球が一人称で読者に語りかける形にしました。

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第一部の「わたし、地球」はどの様なお話になっているのでしょうか。

【氏家】
「わたし、地球」は、アースランドの環境教育プログラムでも子どもたちに伝えている、地球が誕生してから今までの46億年間の歴史の話です。地球では長い時間をかけて様々な環境変化が起きています。そしてその環境変化に伴って地球に暮らす生き物の在り方も変化してきています。
しかし、人類が誕生して、特に産業革命以降は、人類の活動により地球の環境が大きく変化しています。環境変化に合わせて生き物の在り方に変化が生じるのではなく、ヒトという生き物の在り方が地球の環境に変化を生じさせている。これは地球の歴史で初めてのことであり、このことが環境問題の原因です。
私たち人類は地球のため、他の生き物のために、どの様にこれからの未来を生きていくべきなのだろう?と、自分事として考えることに繋がって欲しいとの想いで「わたし、地球」を書きました。

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第二部の「生き物のちから」はどの様なお話になっているのでしょうか。

【黒澤】
地球上には175万種の生き物がいると言われているのですが、全ての生き物がこの地球の命の循環に関わりながら、上手に生態系のバランスをとって生きていることが、とても素晴らしいと私は感じています。
これだけたくさんの生き物が存在していることにも意味があって、それぞれに個性=習性があって、その習性によって、生態系のバランスがこの地球上ではとられていると思っています。
そして、そんな地球上では私たちヒトも生き物の一種類でしかないと考えた時、ヒトの習性ってなんだろうか、と疑問が生まれました。きっと、他の生き物と同様に私たちにしかない習性があるのではないかと思いました。
ヒトには、知能が発達していること、言葉が使えること、感動する心があることなど、他の生き物が持っていない習性があります。これ以外にも、サルとヒトが分かれたくらいから身についている、ヒト本来のものもあるのではないかと思っています。
きっと答えは一つではないはずなので、「ヒトという生き物について」、「地球上での役割について」、「ヒトと他の生き物の未来について」、いろいろと考えるきっかけになってくれればという想いで「生き物のちから」を書きました。

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【氏家】
SDGsのパートはデロイト トーマツさんに主に担っていただきました。
2つの物語では、読者に対してこれからどう生きたらよいのかということを問いかけるような内容となっていますが、若干漠然としてしまっている部分があります。
具体的にどの様なことができるのだろう?と一歩踏み込んで考えるきっかけとなる、SDGsのパートをデロイトトーマツさんにお作りいただいたことで、ともすればふわっとした問いかけで終わりかねないこの冊子が、自分事として未来をきちんと考える機会を与えるものに昇華されたと感じています。
SDGs自体の認知が高まってきていることで、黒澤さんのように以前から環境問題・環境教育に関わってきた方々の想いが伝わるようになってきているのかなと思ったりもします。

【黒澤】
私が環境教育の仕事に就いたのはちょうど10年前のことになります。そのころ、環境教育という言葉はそこまで浸透しておらず、企業へ営業にでかけても「環境に関する取り組みをして、うちの会社が潰れたらどう責任をとってくれるんだ」といって追い返されたこともあったぐらいでした。
しかし、最近ではSDGsに取り組む企業が増えてきて、世界に良い流れができていると思っています。これまで、マイナーで地道に活動していたけれど、やっと追い風が吹いてきたように感じています。この風が、一過性のブームで終わるのではなく、結果が見えてくるまで、継続されていくといいなと思っているし、私たちもこれまで以上に活動に力をいれていきたいと思っています。

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最後に、改めて環境問題や環境教育に対するお二人の想いをお願いします。

【氏家】
私は前職で、教育を通じて子どもたちの自己肯定感を育み、端的に言うと子どもたちが幸せな未来の世界生きることに貢献したい思っていました。それは今でも変わらないのですが、私が当時考えていた世界とは、人の繋がりで構成される社会のことだけを指していました。
今治に来てアースランドに関わったことをきっかけに、子どもたちが幸せな未来を生きるためには人が生きる社会だけにフォーカスするのではなく、全ての生き物が暮らす「地球」にしっかり目を向けなければいけないと気づきました。
私の様に、人の社会にしか目を向けていないと、環境に対して意識が向かず、それが環境問題を生んでいくのだろうと思います。なので、私は以前の私の様な人を少しでも減らして、一人でも多くの人に地球というより広い世界に目を向けてもらえるようにしたいと思っています。

【黒澤】
環境問題とはなにかを一言で説明すると、私は「ヒトの心の問題」だと思っています。
環境問題と幸福論には深いつながりがあるように感じていて、環境問題は、私たち人間が、もっともっと、と豊かさや便利さを追求することから生まれていると思っています。私たちが、現状に満足して、今のままで十分幸せではないか、と思うことが出来たとしたら、発展する方向や速度は変化してくるのではないかと思います。「なにを幸せとするか」という幸せの基準を考え直すときがきているのではないか。そんなことを考えるきっかけをつくりたい、という想いで環境教育に携わっています。
発展を目指すことは決して悪いことではないけれど、やり方を考えなければ自分たちの首を自分たちで締める状態でしかないことを、私たちは早く認識すべきだと思っています。

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